遊技場
遊技台にコインを入れる。
レバーを引く。
リールが回る。
こんな単純作業を、かれこれ数時間も繰り返していた。
2019年1月11日、平日にも関わらず仕事が休みになった。
ギャンブル好きの上司に連れられた俺は、ルールも分からないまま朝っぱらからこの遊技に興じていたのだ。
この遊技場ではコインや鉛玉が紙幣と同等の価値を持つ。
1000円札を遊技台に突っ込むと、同等の価値分のコインが排出され、それを賭けて遊ぶ仕組みだ。
コイン1枚は20円の価値を持つ。
ただ、換金率とかいう比率の関係で、1000円札で排出されるコインの数は47枚。
マイナスからのスタートになってしまう。
普段使っている紙幣が別の価値尺度で全く違う価値を持つ媒体に変化するあたり、まるで外国のようだなと思う。
現に、俺が普段杯を交わすような人達にギャンブル好きはいないし、この遊技場に出入りする人間のなかで親近感が湧くような人物は一人もいなかった。
個人的な意見として、ギャンブルを否定するつもりはない。
しかし他の客達を見ていると、みんな生気の無い顔している。
金を稼ぐためなのか、当たりを引きたいだけなのか、単なる暇つぶしに過ぎないのか。
いずれにせよ、得られる対価はその時間に見合ったものなのか...。
最も、俺の周りにいた人達はそんなことを考えることすら放棄してしまっているようにも見える。
ここにいて俺が得られるものはなんだろう。
ここにいて俺が失うものはなんだろう。
時間だけは過ぎていく。
レバーを引いたままの遊技台のリールは、止まることなく回り続けていた。