その水溜りの深さは

人間に向いてない

何でもいいんだけれど、1つの作品を鑑賞した時に

心の底から「これ、まさしく自分のことじゃん!」って思えるものに出会ったことはあるだろうか。

まるで自分の生活や内面が解剖されて、分析されて作られたような作品。

これは絶対に自分に向けられて作られたものだ...そう感じられるものに出会えることはきっと幸運なことだと思う。ちなみに「この娘、絶対俺に気があるぞ...!」って思える女の子にはたくさん出会うんだけど、それが現実に反映されたことはほぼない。おかしいなあ。

その点、創作物は凄いよ。

こっちの解釈次第でいつでも味方になってくれるし。

そしてラッキーなことに、そんな作品に触れることが出来たのでここに書き記そうと思う。

黒澤いづみさんという方の著書、「人間に向いてない」である。

人間に向いてない

人間に向いてない

 

 

記事タイトルで「こいつまた病んでんのか」って思った人もいるかもしれませんが、今回はそのままタイトルとして作品名を使わせて頂きました。

大丈夫、今日も生きてます、僕。

 

ついでにこの作品のあらすじも引用させて頂くと、

ある日突然発症し、一夜のうちに人間を異形の姿へと変貌させる病「異形性変異症候群」。政府はこの病に罹患した者を法的に死亡したものとして扱い、人権の一切を適用外とすることを決めた。不可解な病が蔓延する日本で、異形の「虫」に変わり果てた引きこもりの息子を持つ一人の母親がいた。あなたの子どもが虫になったら。それでも子どもを愛せますか?     (「BOOKSデータベース」より引用)

 

要約すると、息子がグロい虫になっちゃった!どうすんのよこれ~~~!!

というお話。

勿論、中身はそんな軽いノリではなかった。

しんどいしんどい、ダウナーでガンガンにキマってた。

 

まず虫の描写が素直に気持ち悪い。

想像しやすいように書いてある文体に悪意すら感じる程だ。しかし読み進めていくと、だんだんとそんな虫に愛着が湧いてくるから不思議だ。

過保護な母親と無関心な父親、虫になったのは引きこもりになって陰鬱な感情を溜め込んだ1人息子。この構図だけで感情移入出来るのは、似たような時期を過ごした経験があるからだと思う。

1つだけ違うのは、この家族に重ねた僕の家庭が現在ではなく過去のものであったこと。

自分の生き方は自分で選べる、当たり前だけど難しい。

でもそれが出来なければ、目的もなく徘徊する虫と変わらないのか?そう感じた作品でした。

カフカの変身とよく対比されているから、そちらも読んでから比較記事が書けたらと思う。

 

オススメの作品です。